ヴァンフォーレ甲府のサポーターになって18年目。
ここ数年J2, J3のチームが練習場や専用スタジアムを建てている一方で、スタジアム建設の話は立ち消えて専用の練習場もない甲府の未来を少し悲観している自分がいた。
相対的に甲府の力は落ちていってそのうちJ2でも下位に沈む時がいつか来るのではないか?
そして実際にそうなった今シーズン。そんな思いを抱きつつ迎えていた天皇杯でどんな事を自分は感じていたかを書き残してみる。
2022.10.5 天皇杯準決勝
クラブ史上初めて迎えた準決勝の相手は鹿島アントラーズ。
多分多くのJリーグのチームサポーターが準決勝で鹿島アントラーズと、しかも鹿島スタジアムで対戦する事になったらとても難しいゲームになると考えるんじゃないかと思う。
勝って欲しいし、その後押しをするためにスタジアムへ行ったけど現実的に勝つと思ってたかと聞かれると答えはNO。
だけど勝ってしまった。
まさか本当に勝ってしまうとはというのが正直な気持ちだった。
涙を流しながら"そんな事ある?"と目の前の光景がなかなか実感湧かなかった。
そして決勝の相手がサンフレッチェ広島に決まった。
甲府としては柏好文、佐々木翔、稲垣祥、今津裕太などを引き抜かれた相手であり因縁深い相手。(今シーズンは甲府から野津田岳人が復帰)
選手も取られたのにここまで来てタイトルまで取られたら嫌だなと正直苦笑いしながら決勝の相手を見て思った。
2022.10.13 心を整える
決勝進出が決まってからここまで来たら絶対勝ちたいだったり、ここまで来て負けたらなんだかんだショックだよな〜だったりと気持ちが落ち着かない。
決勝なんて行った事ないもんだから心構えが全然分からない(笑)
毎日ああだこうだと頭の中で思いを巡らせてはあっちに行ったり、こっちにいったり。
ただ最後には選手が全力を出せるように兎に角応援しよう。そうして出た結果を受け入れようという所に個人的には落ち着いた。挑戦者だし。
2022.10.15 試合前日
コレオグラフィーの準備のためにサポーターが集結。150人以上いたんじゃないかと。
せっせと指示に従って紙を座席に貼り付けていく。結構貼ったかな〜と思ったら風に飛ばされてしまったものがチラホラと。飛ばないように一度貼ったやつも含めて貼り直したりもした。
けど見知った仲間たちと夜の誰もいないスタジアムで作業をするのは文化祭の準備みたいな感じがして不思議と楽しかった。
最後は明日に向けてみんなで気合いを入れて解散。うん、とても来て良かった。
作業後はサポ仲間と夕飯へ。
"臣さん1人にために応援してる訳ではないけど、それでも臣さんが決勝のピッチに立ったり、賜杯を掲げる所を見られたら夢みたいだよね。"
"負けるにしてもボコボコは嫌だ!甲府決勝来ない方が良かったんじゃ無いとか言われるような負け方だけはしたくないよなー。"
などと取り止めもなく明日の試合に向けて飯を食いながら語る。
ぶっちゃけもしも勝てるなら何でも良かった、相手のオウンゴールでもなんでも。
2022.10.16 8:00
前日シート貼りをした待機列へ向かう。コロナ禍でシート貼りが久々だったのでなんだかそわそわする。
スタジアム近くの電光掲示板に"天皇杯"と表示されてるのを見ていよいよ試合が近づいてる事を実感。
列整理後はぶっちゃけ暇だったので、新横浜駅まで戻り紅葉饅頭を大量購入!
ひたすら顔見知りにサポーター配る配る。
ベタだけど広島食ってやりましょう。
そしたら同じくもみじ饅頭を配ってる顔見知りのサポーターに出くわしたので饅頭の交換をした笑。
開門後はスタグルへ。元甲府の小椋祥平と武岡優斗が販売してたかき氷を買いに。サポーターが集まり過ぎてだいぶカオスだった(汗)
2022.10.16 14:00
試合前のチャントや甲府のゴール裏の雰囲気が物凄く良い!声出しエリア以外の人達も手拍子をしてくれて過去最高レベル。
ゴール裏にいたので客観的にはよく分からないけど、広島に対して応援では先手を取れたような感覚だった。
そして前半27分に見事にデザインされたコーナーキックから会心のさんぺーさん(三平和司)がゴール!
今年はメンデスや野津田岳人が去ってコーナキックからのゴールが減っていたのでまさかの形での先制点。
しかし残り時間が長い…
もう試合終了にして欲しいぞ。
2022.10.16 後半39分
後半は耐える時間が増えたものの、決定機自体は作られて無かったのでこれは鹿島戦のように逃げ切れるんじゃないかとそわそわ思い始めた辺りに、左サイドから強烈な一撃。
これぞJ1チームという一発を河村選手に食らってしまった。あそこであれを撃てるのは素直に凄い。
広島はベンチメンバーも豪華なので延長に入ろうが圧力を維持して来そうだけど、甲府はどんどんパワーダウンしてるのが分かってたので勝てるイメージが湧いて来なかったのが正直なところだった。
が、理屈なんて一旦置いといて兎に角声を出し続けた。こちらも出し切らねば。
2022.10.16 延長後半11分
あれ、なんか広島のベンチから沢山人が飛び出して来たなと思った。
ペナルティエリアの際どい所で甲府がファール気味のプレーをして流されでもしたのかな、などと思ってたら臣さん(山本英臣)っぽいシルエットの人が膝をついて崩れ落ちてるのが見えた。
え、PK?
絶句。フリーズ。周りの選手の雰囲気も見て臣がPKを取られた事をようやく把握。
瞬間、20年甲府のために戦った男が戦犯になる位なら決勝来ない方が良かったんじゃないか…などと頭に浮かんだ所で、周囲のサポーター達の声援の声で我に帰る。
そうだ兎に角声を出さなければ。
ありったけの力を込めて河田コールをする。
そして広島のキッカー満田が蹴ったPKを…
河田晃兵が止めた…!
なんだこれ、なんなんだこれ、こんな事あるのか…!?
2022.10.16 PK戦
最初のキッカーはリラ。助っ人として大活躍だったとは言えないけども、PKに関してはこの2シーズンで全部決めていて、個人的には甲府の歴代PKキッカーとしてはかなり優れた選手と思っていたので安心して見ていられた。そしてやはりきっちり逆をついて決めてくれた。
そこからジェトゥリオ、松本凪生がきっちり決めていく。
2番手のジェトゥリオはプレー時間が少なくて未だどんな選手かもわかって無かったけどPKめちゃくちゃ上手かった(笑)
そして広島の同点ゴールを決めた広島の河村が4番手で出て来たのをまたも河田晃兵がストップ!
そして甲府は4番手の石川俊輝も決めて遂にリード。
広島は5人目の満田が決めて、甲府が決めれば勝利となるシュチュエーションの5人目で出て来たのはやはり山本英臣だった。
前回J1にいた時は臣がPKを蹴る事が多かったので、多分蹴るんだろうなと思ってたので驚きは無かった。
臣が蹴りに歩いていく間、ペナルティスポット周辺の地面を踏み固めてる間もひたすら声援を送り続けた。
背番号4がゆっくりした助走から蹴ったボールは左のサイドネット目掛けて強烈に吸い込まれていった。
うおおおおおおおああああああああああああああああああっ!
声にならない声を上げつつ涙を流しつつ一緒に観戦してたサポーター仲間達と抱き合う。
生きてて良かった。
こんな事あるのか。
やばいやばいやばい。
信じられない思いで周りのサポーター達の顔やピッチを見る。
本当にこれは現実なのか?
2022.10.16 賜杯を手に
山本英臣を天皇杯を掲げた瞬間、号泣。
もしこんな事が起きたら最高だよねと妄想していた光景がそこにあった。
バンディエラの山本英臣がPKを取られて、地獄に落とされてからそのPKを河田が止めて、もつれ込んだPK戦がその山本英臣のキックで決着が着くとかこんな出来過ぎた話があるのか?
あまりに自分にとっては劇的過ぎる試合だった。
これよりレベルの高い試合は今後も見られる機会はあると思うけど、これよりエモーショナルな気持ちになれる試合、ドラマチックな試合に果たして自分は残りの人生で出会えるのか?
日本がワールドカップで優勝したらどうだろう?
それでも越えるか分からないのが正直なところ。
大袈裟でなく自分にとって生涯最高の試合になるかもしれないけど、また想像もつかない様な驚きをくれる試合に出会える事を期待して、またサッカー観戦を、ヴァンフォーレ甲府の応援を続けて行くのだと思う。史上最高の日を求めて。