海外組に会いに行こう

海外組へ会いに行った時のことや各チームの練習場の行き方などを中心に書いていきます。甲府サポ。CSKAモスクワ、フィテッセ、フェンロ、バルセロナ、などの練習場へ。

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  • 無料公開「会社員が休暇制度を利用して行った23,000kmのW杯旅」

    今回ロシアワールドカップ に行った体験を何かしらに残しておきたいと思った事、行くのを迷ったりしている人の背中を押せたらと思い、村上アシシさん著の「ロシアワールドカップ現地観戦記 日本代表サポーター23人の物語」に寄稿させて頂きました。

     

    Kindle版「ロシアW杯現地観戦記」が遂に発売! 僕がこの書籍を上梓した理由 | Endless Journey

     

    23人のサポーターがそれぞれの視点から1つコラムを書いているのですが、私の書かせて頂いたコラムを本ブログで公開させて頂く事になりました。


    私が四年前からどのように準備をして、どのように仕事との折り合いをつけ、どう現地で過ごしたかを書いてみたので良かったら読んで下さい。

     

    コラム「会社員が休暇制度を利用して行った23,000kmのW杯旅」

     

     小学生の時にテレビ越しに見たアメリカ大会が、私とワールドカップとの出合いだ。残念ながら日本代表は出場していなかったものの、スター選手のスーパープレーや、時折映る個性的な格好をしたサポーターの姿に釘づけになった。自然といつかワールドカップを見にいきたいという夢をいだくようになったが、意外にも早くその夢はかなった。そう、2002年の日韓ワールドカップである。


    日本代表の試合ではなかったものの、強豪アルゼンチン代表の試合のチケットが取れた。バティストゥータオルテガサネッティといったスーパースターを生で見られたことに喜びを感じつつも、意外なことがあった。スタンドには空席が目立ち、どことなくスタジアムが静かだったのだ(当時、チケットが完売しているにも関わらず、空席が存在する問題が起きていた)。
    試合後にスタジアム周辺でアルゼンチンサポーターが応援歌を歌い、周囲の日本人にも一緒に歌おうと誘っていたが、恥ずかしがって歌わない日本人がほとんどだった。次第に彼らも、周囲が盛り上がらない雰囲気を察して、歌うのを止めてしまった。
    ワールドカップを見るという夢はかなったものの、モヤっとした違和感が残った。


    そして2014年。サッカー王国ブラジルでワールドカップが行われる。ラテンアメリカで開催される「世紀の祭典」は、さぞかしお祭り騒ぎになるだろうと期待に胸を膨らませ、勢いで日本戦の観戦チケットと、ブラジルの入国ビザを手に入れた。


    しかし…。
    どうしても外せない仕事が入ってしまい、直前で渡航を断念せざるをえなかった。
    コロンビア代表に1-4で大敗した日本代表の試合は、自宅のテレビで見届けた。残酷なまでにコロンビア代表に打ちのめされた日本代表とサポーターの姿を画面越しに見ながら、「どうして自分はこの地に行けなかったのだろう…」と激しく後悔した。そして4年後こそは「何が何でもロシアへ行くのだ」と固く心に決めたのだった。


    胃が痛くなる思いで休暇を申請


    そしてついにロシア大会である。
    今度こそはと思いつつも、また直前に仕事が入って断念せざるをえないケースもありえる。そんなリスクを避けるため、私が目をつけたのが勤め先の休暇制度だ。10年間勤務すると数十日の休暇を取得できる制度だった。


    幸運にもロシア大会前に休暇取得の権利を得られる。この制度を使ってワールドカップへ行こうと考えたが、聞いてみると同じ部署でこの休暇制度を利用した社員は、誰もいなかった。本当にこの制度を使っていいのか? 不安を感じながらも、私は外堀から埋めていく作戦を取った。


    最初は飲み会の席でそれとなく、上司や同僚にその制度を取りたい旨を冗談めかして伝えることから始めた。そして徐々に仕事の場でも、上司との面談などで正式に相談した。そうやって、数十日の休暇を取る意志が固いことを同じ部署のメンバーにじわじわと伝えていったのだ。実際に休暇の申請を出す際には胃が痛くなる思いだった。


    休暇申請は無事に受理された。同僚たちが快く送りだしてくれたのが救いだった。こうして初めての国外でのワールドカップ現地観戦が決まった。


    数十日も休暇を取ってワールドカップを見にいけるなんて、人生で一度きりだろう。ならばとことん楽しもうと思い、ワールドカップ3週間前から始まる日本代表の欧州合宿にも足を運び、そこから直接ロシアへ入国することにした。ワールドカップ本番では、開幕戦から決勝まで約1カ月間、まるごとロシアに滞在する計画を立てた。さらにもうひとつ、人が真似できないようなミッションを思いついた。


    「ロシアワールドカップの全開催都市で試合を見る」というプランだ。
    日本がグループリーグを突破した場合、敗退した場合で決勝トーナメントでの行き先が変わるため、どうすれば日本代表の試合を観戦しながら、全11都市を回ることができるのか、頭を悩ませる日々が続いた。


    重宝した「FIFA TRAIN」


    全開催都市に行くとなると、重要なのが移動手段とその費用だ。ロシアワールドカップの開催地は西部の都市に集中していたとはいえ、その都市間の距離は決して近いとは言えない。例えば日本代表の第2戦が行われたエカテリンブルクは、モスクワから約1,800kmも離れている。飛行機を利用するのが理にかなっていたが、ワールドカップ期間中は航空券代が高騰していた。すべての移動を飛行機で飛ぶとなると、あまりにも移動費が膨らんでしまう。


    そこで重宝したのが、FIFAが提供した寝台列車だった。ロシアワールドカップではありがたいことに、観戦チケット購入者は各開催都市を結ぶ、その寝台列車に無料で乗ることができた。


    この無料寝台列車を多用することで交通費の節約はできたが、それに反比例する形で移動時間は非常に長くなった。私が利用した中で最も長い移動は、カザンからロストフ・ナ・ドヌーまでの33時間。基本的に寝台列車は1部屋4人の構成で、常にベッドで横になれるため、体力的には問題なかったが、ネットがつながらないことが多く、ずっと狭い車両にい続けるのは精神的にしんどいものがあった。


    またヴォルゴグラードからカザンまでの鉄道移動では、とんでもないトラブルに遭遇した。出発地のヴォルゴグラードが40度近い猛暑だったにもかかわらず、私が予約した車両にはエアコンがついていなかったのだ。車内はまさに蒸し風呂状態と化し、23時間に及ぶ移動はまさに灼熱地獄だった。

     

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    ロシア鉄道の車窓から


    しかし悪いことばかりではなかった。同部屋となった他国のサポーターや現地のロシア人とは活発に交流できた。お互いに食べ物や飲み物を振る舞い、ちょっとしたお茶会を開き、それぞれの国の文化やサッカー事情など、あらゆる話題で話に花を咲かせた。別れ際にはお互いハグをして「パカ(ロシア語でまたね)」と言って別れるのが定番となった。


    移動距離は東京⇔ニューヨーク1往復に相当


    様々な困難を乗り越えて、なんとか大会期間中に全11都市を回り、計14試合をスタジアムで観戦することができた。計19回の長距離移動で、移動距離は23,000kmにも及んだ。ちなみに東京とニューヨーク間が約11,000㎞だ。つまり、この1カ月間の国内移動で、東京とニューヨークを1往復したことになる。
    宿泊費はモスクワに拠点となる物件をAirbnbで1カ月まるごと借りて約8.5万円、地方都市ではホステルに計7泊して約1.5万円、合計で約10万円となった。宿泊費が1日平均3,300円は上出来だと思う。


    交通費は、19回の長距離移動のうち、無料列車を8回使用して10万円弱に抑えるつもりだったが、飛び地のカリーニングラードへ行く際、途中で通過するベラルーシでビザの問題が発生し、陸路を断念して航空券を買い直すトラブルがあった。結果的に19回の移動の内訳は、無料列車5回、有料列車4回、飛行機10回となり、15万円弱の交通費がかかった。しかしこれでも、平均すれば1回の移動が1万円を切ったので、悪くなかったと思う。


    そして現地に行ったからこそ、見えたものもあった。欧州の大会なのに、地球の裏側から駆けつけた南米のサポーターが非常に多かったこと。日本が大好きだと言い、ジャパンブルーのユニフォームを着て日本を応援してくれる他国のサポーターがたくさんいたこと。自国の出場はかなわなかったが、観戦に訪れていた32カ国以外のサポーターが多かったこと。彼らとの交流を思い出すたびに、ロシアワールドカップが恋しくてたまらない。


    正直ワールドカップに行く前は、試合のことしか頭になかったが、大会が終わってみると、他国サポーターとの交流やその姿が、試合以上に印象深く思い出される。サッカーを見にいったつもりが、巨大な国際フェスティバルの中で、ひとつの楽しみとして、サッカーの試合を楽しんだという印象だ。


    2022年はリモートワークでのW杯参戦が主流になる?


    近年、勤続年数に応じた休暇制度を設ける企業が増えているが、私のように実際にその制度を利用している人は、まだまだ少ない。実際に自分の部署では、私がその権利を行使した社員第1号だった。


    このような制度がある企業に勤めている方(もしくはこれから勤める方)は、世紀の祭典ワールドカップを現地で見るために、その制度を利用してみてはいかがだろうか? もちろん円満に休暇が取得できるように日々の仕事で結果を出す、担当の仕事を属人化させない、などの努力が必須だ。そういった努力をしていれば、「4年に1度のワールドカップなら仕方ない」と上司が受け入れてくれる可能性は高まると思う。


    また最近ではリモートワークを許可する企業も増えてきている。知り合いには、ワールドカップの試合のない日はモスクワで仕事をしつつ、試合のある日には有給を取得しながらワールドカップを現地で楽しむ「スーパーサラリーマン」がいた。4年後のカタールワールドカップでは、こういったワークスタイルが当たり前になっているかもしれない。


    働き方改革が叫ばれる昨今、4年に1度のワールドカップを現地参戦するという、仕事とは別の目標を立てると、その改革が円滑に進むのではないかと私は思う。日々の仕事のモチベーションを上げるためにも、プライベートでの明確な目標を持つことは良いことだ。


    4年後には各企業の働き方改革が実を結び、ひとりでも多くの会社員が会社を退職せずにカタールの地を踏めることを願っている。

     

    Kindle版「ロシアワールドカップ現地観戦記 日本代表サポーター23人の物語」から転載)

     

    以上のようなコラムが大学生、会社員、主婦、現地駐在員、ライター等と、性別、年齢とバラバラな23人の視点で綴られた物語が載せてあります。


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    もし次回のワールドカップに少しでも行ってみようかと思ってる方は是非手にとって頂けると嬉しいです。